2014年県展受賞作品


第64回(2014年)埼玉県美術展覧会受賞作品と審査評

ページの先頭へ第1部「日本画」

審査主任 鈴木至夫(すずきのりお)
第64回県展日本画部の出品点数は、昨年より減少し、一般応募作品は181点でした。従来から用いられていた材料の特殊性、現代の新しい時代の流れかも知れませんが、県展に出品することを専門的に考えすぎての結果もあると思います。
審査については、せっかく出品した作品を展示壁面の都合で、すべて展示することができないため、出品者の気持ちになって審査員一同真剣かつ厳正に135点の入選作品を決定しました。
入賞作品8点についても同様に審査し、候補作品を審査員の中で評価し合い、最後は投票で決定しました。
全体を通して、今年の出品作品は技術の面でも専門的になり、努力した作品が非常に多いと思いました。中でも入賞作品8点はすばらしく、作者の最高齢なんと89歳、60歳台が6名、50歳後半が1名です。いつまでも楽しみながら頑張って日本画を画くことは大変すばらしいことだと思いました。

■埼玉県知事賞

※受賞作品をクリックしますと拡大画像が表示されます。
「森の誘い」
島村良子(しまむらりょうこ)
森の誘い
森の木々が色づき始めた秋の日。静まり返った小径を行くと、コーヒー店の案内板がわびしく立っていた … こんな景色を想像します。薄明かりの森の中、空の白さが際立つのが面白く、すばらしい作品です。

■埼玉県議会議長賞

「季」
斉藤 由(さいとうゆう)
季
画面中央に白い花、青いカットグラスの花瓶、テーブルの上に置かれた小さなオモチャ。平面的に構成された静かな色彩の美しい作品です。

■埼玉県教育委員会賞

「夢紀行」
高橋裕子(たかはしひろこ)
夢紀行
利用する人も無くなり、今は鉄路にかつての駅舎がどっしりと立っています。秋の淋しい枯葉の世界に、煉瓦の赤い色とステンド・ガラスが美しいです。

■埼玉県美術家協会賞

「秋めく」
倉持政江(くらもちまさえ)
秋めく
晩秋の取り残したトウモロコシと、赤かったホオヅキが色褪せてわびしさを感じます。立枯れしたトウモロコシを大胆に表現しているところが良いと思います。

■埼玉県美術家協会賞

「冬枯れ」
岸 一也(きしかずや)
冬枯れ
葉が落ちてこれからそろそろ冬に入る公園の静寂とした感じがモノクロの色調で表現された作品。木道と中央に画かれた立木の構成がしっかりしています。

■産経新聞社賞

「光を受けて」
服部繭子(はっとりまゆこ)
光を受けて
夏に日焼けした若い女性が、壁の前で椅子に坐ってこちらを見ています。画面中央をずらしバックを広くとり、模様を描いた意図的な構図が面白いです。

■埼玉県美術家協会会長賞

「野菜と紙袋」
秦野春藏(はたのはるぞう)
野菜と紙袋
多分、愛情をこめて家庭菜園で育てた野菜でしょうか?作者の温かい気持ちと、一方でその野菜を画く厳しい心が表れた力作。土の香りまで感じられる作品だと思います。

■高田誠記念賞

「気配」
溝上紀美(みぞかみのりみ)
気配
何かが現れそうな、見る人に考えさせる作品。モノクロの色調の中に、肩掛けの模様の色が強調されて、もう一度考えて見たくなる作品です。

ページの先頭へ第2部「洋画」

審査主任 大木英穂(おおきひでほ)
第64回展の洋画部門は出品者数、出品点数共に、昨年第63回展と比較して、10%以上減少し、応募作品数は一般と埼玉県美術家協会会員、合わせて1,341,でした。今展では出品作品の大きさの上限を60号から50号への変更を初めて試み、陳列可能な点数も若干増えるのではと考えておりました。審査初日から一審、2日目の二審、三審を繰り返し、一般と会員合わせて551点の入選作品を決定し、その中から賞候補48点を選びました。さらに投票を繰り返し、一般と会員が対象の三賞及び各賞の16点を決定しました。
その後、委嘱作品の中から賞候補を選び、投票により埼玉県美術家協会会長賞及び高田誠記念賞の二作品を決定しました。16点の受賞作品については、全体的にはやや物足りないという気持ちも無くはありませんでしたが、各審査員に講評を書いていただいている間、じっと拝見すると、描き込まれている作品の多いことを感じました。特に上位の賞が16歳の高校生と40歳台の若い方々の受賞ということで、高齢化の一途?かと思われた県展の未来にも、少し明るい光が見えたようにも思いました。
洋画部門において近年では最も多い陳列数と41%という入選率で、県民の祭典とも言える催事の役目も果たすことが出来たのではないかと思っております。

■埼玉県知事賞

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「陽光」
根岸亮子(ねぎしりょうこ)
陽光
右方向から柔らかな光が射し込み、暖かみの溢れた作品です。中央の柱時計に緩やかな時間の流れを感じます。長い時を経て枯れ果てたからすうりと、生き生きとした花々との対比がおもしろく表現されていると思いました。一見、無造作に配置されたボトルや果物もそれぞれに表情があり、愛情を持って制作している作者の姿勢が想像できます。確かなデッサン力に裏打ちされた心地よい作品です。

■埼玉県議会議長賞

「芽生えの経過」
江連彩圭(えづれあやか)
芽生えの経過
透明水彩の色調が美しく、静かな中にも力強い生命力を感じさせる力作です。
主題の木を捉える視点を上方から見下ろす事で、通常の(木の)形とはやや異質の印象を与えますが、斜めに伸びる影の方向性と相まって、画面構成に微妙なバランスと空間感を生んでいます。
根元から生えている草が、やや地面にくっついている様に見えるのは少し気になるところです。
また、透明水彩の宿命として絵の具の重ね方に制約(限界)があるという点をどの様に克服するか、今後の研鑽に期待したいと思います。
特選受賞おめでとうございます。

■埼玉県教育委員会教育長賞

「午後の窓辺」
吉川和典(きっかわかずのり)
午後の窓辺
埼玉県展において人物画は激戦分野だと思いますが、その中で今回の作品は、構図・人物描写・色調等、いずれにおいても秀でた力量を示した一点だと思います。
日常の何気ない、ふと振り返った場面を過不足なく描写しつつ、人物画としての魅力を50号のキャンバスの中に余す所なく発揮されたと思います。
ただ、向かって左肩から右肩への奥行き感は少し平板に見えてしまい、また、コップを持った指、机の縁の線、イスの脚等、多少表現が満たされていないと思われる所が気になります。
最後まで遺漏のない様、集中力を切らさず作画に取り組まれることを期待します。

■埼玉県美術家協会賞

「見つめている時間」
並木千恵子(なみきちえこ)
見つめている時間
爽やかな風を感じさせる佳作だと思います。
土手の草々、曇り空の色調等画面に透明な空気感を漂わせています。加えて、遥か彼方を見ている少女の視線の丁寧な描写等、作者の柔らかな心持ちを醸し出していて実に魅力的です。
反面、やや画面構成が定型的で、それぞれの要素が収まり過ぎているきらいもあるかと思います。視点(切り口)を少し変える事でさらに新たな展開も可能だと思いますので、一層の研鑽を期待しています。

■埼玉県美術家協会賞

「蟹と古臼」
森 忠郎(もりただお)
蟹と古臼
蔵の中の古い長持や家具などを背景に、古い臼の上に竹ザル、その中にズワイ蟹一匹、その下にあじの干物、さざえなどがあり、干物の脇には黒猫を配したユーモラスな構成です。
古い長持の金具や竹ザルの質感まで的確に捉えています。画面上部の窓からわずかに陽が射し込んでいる様子も大変効果的だと感じます。忘れかけている日本の懐かしい風景に出逢ったような感度の高さに魅せられます。
今後更なる発展に期待します。

■埼玉県美術家協会賞

「スランプ褶曲」
本橋八郎(もとはしはちろう)
スランプ褶曲
秩父がまだ海底にあった時にできた地層に、巨大な横圧力が加わり褶曲ができました。その時の想像もできない激震、大音響、それとは対照的な現在の静けさが大変良く描けています。そこに気の遠くなるような時間の長さを感じさせる秀作です。細い枝の明度差を抑えると、岩の部分が一段と強くなると思います。
画面下部の落葉については、色は抑えても、ぼかした感じにならない方が良いと思います。

■埼玉県美術家協会賞

「秋声」
松﨑セツ(まつさきせつ)
秋声
木の根をテーマに描かれていますが、根の張り方の動きに魅力を感じます。
斜めから射し込む光が温かく、明暗表現が的確で木の肌の表現にリアリティを感じます。メインの木だけでなく背景への神経の使い方が素晴らしいです。
メインとなるオレンジ系の色と背景の緑との対比がとても良いと思います。
背景のタッチと地面の枯葉の散らばり具合が単調にならないように考えたいです。

■さいたま市長賞

「野辺にて」
萩原達男(はぎはらたつお)
野辺にて
まずは、木立ちを中心に、手前に広がる川の水面、遠景の山並み等、構図に安定感が感じられました。また、色はモノトーンに抑え、冬の季節感、空気感がよく表現されています。描込み、タッチ共に穏やかでありながら、木々や草の陰の表現によって冬の陽光の力強さも感じさせられました。また、水面に落ちた草や岸辺の影、空の色もよく描かれ、穏やかな川の流れを感じさせます。冬の風景の空気感をよく表現した秀作であると思います。

■さいたま市議会議長賞

「ランプのある静物」
川端佑京(かわばたたすけ)
ランプのある静物
この作品の前に立つと水彩技術によるこの素晴らしい質感表現に、まず驚きを感じます。画面に配置されているモチーフのそれぞれの質感を見事に描きわける技術の高さは素晴らしく、鑑賞者に感動を与えることでしょう。また、画面全体の空気感も大変よく表現されています。ただ静物画にとって重要なことは、画面の中に自身が感動するモチーフをどのように配置し、その感動の心を表現するかにあります。モチーフの配置とその大きさが少し気になるのは私だけでしょうか。
今後の制作に、更なる期待をします。

■さいたま市教育委員会教育長賞

「土に還る」
加藤修(かとうおさむ)
土に還る
枯木が朽ちていく状態がリアルに表現されています。テーマがしっかりしていて、周りの生きた緑との対比で、更にテーマを強めています。木のゴツゴツとした感じ、光と影の表現も素晴らしいと思います。木を描く場合、茶色を使いたくなりますが、この木は紫色を使っている点も魅力的です。木の形や穴の開き具合にも、リズムやバランスがうまくいっています。
背景の面積がやや広いので、画面下部の木を全体的に少し上げたらどうかと感じました。

■日本経済新聞社賞

「廃車」
強矢康夫(すねややすお)
廃車
この作品は貨車の部分を描き、全体が暗示される様に構成されています。主に水平線、垂直線、そして両方の曲線で制作されています。移り行く時の流れに、かつての貨車としての活躍、栄光はもはや機能を失いました。「単なる存在」になった物への挽歌ではないだろうかと思いましたが、貨車の前方に視線を移すと少しの枯れた草を残し、あとは一切生物のいない世界です。
作品としては情感より強い存在感を覚えました。
これからの存在感と更なる発見に期待し、益々のご活躍を祈ります。

■毎日新聞社賞

「山道の竹林」
斉藤紀久子(さいとうきくこ)
山道の竹林
ざわざわと、葉ずれの音を聞きながらゆっくりと山道を歩くと、心地よい風にそーっと押されながら、のびやかな木々の匂い、山々の大地の感触、太陽の光が木漏れ日となり私達に降りかかります。自然とは改めて人間の創りえない凄さと抱擁力で、私達を圧倒し、あたたかさを与えてくれるような気がします。
この作品は春を間近にひかえ、たたずむ竹林を描きたかったのではないでしょうか。

■NHKさいたま放送局賞

「港の名残り」
長谷川隆治(はせがわたかはる)
港の名残り
青色と赤色の建物の対比が人の目を惹き付けます。陽差しを受け、建物に行き交う点景人物が適度に配置され画面にリズム感があります。
画面全体が暖かく、描かれた由緒ある建物を含めた海沿いの街の空気が良く感じられます。作者の誠実な作画姿勢に好感が持て、作品に味があり独特の世界を感じさせます。

■読売新聞社賞

「雪後(両神山遠望)」
浅見勘一郎(あざみかんいちろう)
雪後(両神山遠望)
秩父の雪の風景ですがデフォルメされた両神山が画面上部に堂々と聳えています。対照的にリズムよく繊細に描かれた木々と構成的で変化に富んだ台地がユニークです。プリミティブに表現された家並は生命態のようにおもしろく感じました。
作者の目を通して作品全体が対象をただ写し取るのではなく、造形的に表現されていて、現場の空気や香りが感じられる力作だと思いました。

■テレビ埼玉賞

「鏡面反射」
コーコラン マーク ボイド 健太(こーこらんまーくぼいどけんた
鏡面反射
着想並びに表現に実に良いものを感じます。
魚の配置、川底の砂地、水の流れそれぞれの色調、材質感、リズム感ある描写と構成の良さが魅力的です。水の透明度、前後の距離感等作者の工夫と苦心が感じられます。
全体をモノクロに近い類似色でまとめた事、魚の要所に赤系色を用いたことも効果的で、今後の描写に期待します。

■東京新聞賞

「樹下波紋」
石井百合子(いしいゆりこ)
樹下波紋
手前に広がる水面の波紋により、風景の静けさの中に広がる微妙な動きや騒めきさえも観る人に伝えてくるような、描写力のある優れた作品です。また、近景から遠景へと穏やかに続く広がりも感じさせられました。描込みについても、細部を描かずとも程好いまとまりとして、波や木々の葉の形状をよくあらわしていると思います。色も緑陰から陽光を受けた木々と穏やかに続く諧調で、よくまとめられました。

■埼玉県美術家協会会長賞

「飛来した中世の街」
三澤文人(みさわふみと)
飛来した中世の街
作品のタイトルそのもの、作品の中に表れる不思議とも思える数々の塔や建物が、変化する色のグラデーションで表現されています。
さすがベテランと言わせる秀作であると思います。

■高田誠記念賞

「玄冬」
高橋美紀子(たかはしみきこ)
玄冬
細い梢の先まで表現された雪降る玄冬の白樺林に耳を澄ますと、画面中央に描かれた細い竹ヒゴで編まれた不定形の立体が雪上を静かに移動してゆくかのように思えます。
力強くもあり、繊細でもある力作だと思います。

ページの先頭へ第3部「彫刻」

審査主任 塩原康正(しおばらやすまさ)
第64回県展彫刻部の審査は、塑造、石彫、金属等を扱う計7名の審査員が担当しました。
はげしく変化する社会状況を反影し創作活動に対する興味、関心が薄れつつある昨今、出品点数の減少が気がかりでした。しかし、彫刻を制作され、県展を愛する皆様のご努力により、例年並みの出品点数を確保しました。彫刻による創作活動を続ける上で諸々の制約がある中で、60歳以上の出品者が6割強を占めました。彫刻造形の基本である量感、空間の表現、作者の制作意図が明確に表れている賢実な作品が多くみられ、熟年層のまじめな努力と情熱に明るさを感じました。さらに、20代までの若い出品者が2割を占め、今後いかに育て、制作を継続させ創造の喜びを体感させるべきか、フレッシュな若者を仲間とする妙案を考えたいと思います。
お互い制作に対して自分に厳しく、切磋琢磨し、地道に頑張りたいと思います。

■埼玉県知事賞

※受賞作品をクリックしますと拡大画像が表示されます。
「M 2013」
花野井文男(はなのいふみお)
M 2013
彫刻ではオーソドックスな裸婦立像ですが、自然な体の動きと交差した足でしっかり立っている姿は、等身大でありながら全体のプロポーションの的確さ等、基本のしっかりした作品です。粘土で制作し、石膏取りをした後、ペーパーで磨かれた肌合いは、人体の柔らかさと美しさを感じさせます。右腕を頭にうつむき加減のその表情から、女性の想いや優しさを感じる優れた作品だと思います。

■埼玉県議会議長賞

「おてんば娘」
清水啓一郎(しみずけいいちろう)
おてんば娘
猫のもっている尊厳さを感じさせる形態が、石を通して伝わってくる佳作です。
実材としての石のもっている密度を壊す事なく、作者の技量とセンスの良さが伺えます。静寂な存在感のある作品です。

■埼玉県教育委員会教育長賞

「流転」
重田華果(しげたはるか)
流転
大理石のもっている柔らかさを生かし、実量と虚量のバランスが心地よく、生命感が感じられる作品になっています。今後の課題として、継ぎ合わせるのではなく一つの石を掘りさげれば、より密度のある実材の強さが強調される作品になるのではないかと思います。
今後、どの様に展開して作品を創っていくのか楽しみです。

■埼玉県美術家協会賞

「春雷のころ」
矢島秀吉(やじまひでよし)
春雷のころ
手慣れた手法でバランスがとれ、しっかりとした量感と、人体構成の基礎が的確で、非常に良く表現され、また石膏のままも自然で好感がもてました。爽やかさを感じさせる優れた作品に仕上がっていると思います。
今後も自らの主張をもって制作して頂ければ幸いです。次回の作品がまた楽しみです。

■埼玉県美術家協会賞

「メリダの女」
磯 廣子(いそひろこ)
メリダの女
ここ数年、同じモチーフをさらに追求をすることでボリュームアップをし、豊かさと力の張りがよく伝わってきます。右脇で組んだ手が少し小さい気もしましたが、この作品ではむしろ効果的に作用し、強い女性像の中にも優しさが漂っています。漆を使った皮膚と着衣のコントラスト、マチエールも美しく好感のもてる作品です。

■埼玉新聞社賞

「青春の頃」
金子裕(かねこゆたか)
青春の頃
長年出品されている金子裕氏の作品。今回の大作も極めて完成度が高い仕事ぶりで、静かに佇む等身大の青年像から作者の実直な性格までにじみ出ている、好感のもてる作品です。やや造形表現に堅さを感じますが、高齢にもかかわらず制作に対する情熱と努力が伺える力作です。いつまでも元気で喜びにあふれた創作活動を続けてほしいと期待しています。

■埼玉県美術家協会会長賞

「木から樹に生る」
杉田龍(すぎたりゅう)
木から樹に生る
一枚の鉄板をガス切断により立体や平面作品に形成し、ここ数年発表しているようです。
デッサン、コンポジション等が充分に計算され、作者の制作意図が伝わって来る、新鮮な発想と技法を駆使した作品だと思います。彫刻は、時間はもとより大変な創作活動だと思いますが、今後も期待する作家の一人であってほしいです。

■高田誠記念賞

「お手伝い」
境野里香(さかいのりか)
お手伝い
ママの手元を見ながら、タオルをたたむ幼い女の子の表情やしぐさが、日常目にする幼子に対する暖かい眼差しを感じさせられる作品です。
着色は、石膏の白を生かし、ほんのりと淡いピンク色が作品全体をやさしく包み込んでいます。構図上のバランスも良く、デッサンの確かさに安定感のある力量を感じました。

ページの先頭へ第4部「工芸」

審査主任 榎本洋二(えのもとようじ)
第64回展の工芸部門は、昨年より出品者数・出品点数がやや減少したものの、出品数350点を数え、内容の充実した力作が多数出品されました。
表現、素材とも幅広く、工夫や努力の跡が見て取れるユニークな作品もある中、2日間に渡り、慎重な協議を重ねながら197点の作品を選出し、更に協議、投票を幾度も執り行い、受賞作品を決定しました。
特に今回は、受賞作品の内容の充実と質の良さ、確かな技術力による完成度の高さが印象に残りました。更に言えることは、若いちからの台頭も見られるなど、今後に期待をもてるのではないかと強く感じました。
委嘱作品の受賞については、多くの作品が賞候補として選ばれましたが、審査員の相互間の協議や意見交換の時間を充分にとり、投票を重ね、慎重に絞り込み、選出しました。
一般・会員の皆様は勿論ですが、委嘱の方々にも力のこもった素晴らしい作品の出品を、今後とも期待しております。

■埼玉県知事賞

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「花籃『黎明』」
大木淑恵(おおきとしえ)
花籃『黎明』
巾7mmの竹を縦すじの幹部と横すじの外枠部で構成した組みの花藍です。竹芸特性の「組むこと」を最大限に生かした作品になっています。シンプルで安定感のある型、漆による染色の美しさ、落し部分の的確さ等々、どれをとっても完璧と言える作品に仕上がっている秀作です。

■埼玉県議会議長賞

「経緯絣 宇宙」
原 知恵子(はらちえこ)
経緯絣 宇宙
さわやかな色彩の組み合せが見る人を引きつける「経緯絣 宇宙」と題した原知恵子氏の作品は、経緯絣の確かな技術の上にテーマに添った表現が成り立っていると言えます。
絣の染め足も神経質になりすぎず、おおらかで効果的です。白の効果がうまく生かされ、ピンク系と淡いグリーン系の中にグレー系を適切に配色した優品です。

■埼玉県教育委員会教育長賞

「色紙箱 回り道」
大上京子(おおうえきょうこ)
色紙箱 回り道
路面に咲く白詰草を文様とし、やさしくも力強く大地に根を張る生命力を感じさせます。草花に螺鈿を配する技法は、鮑薄貝裏に彩色を施し豊かに表現しています。蒔絵は蒔き暈しと研出しに抑揚を加え、幾何学文様と調和させています。側面のほのかに見え隠れする草文様は「塗り」によって描かれています。
多くの技法を存分に生かした秀作です。

■埼玉県美術家協会賞

「型染帯『華』」
倉田英子(くらたひでこ)
型染帯『華』
型染の特徴はリピートにあります。一つのユニットの図柄のよさだけでなく、繰り返されたときの効果が大切です。「華」と題した倉田英子氏の作品は、自分なりの華のイメージを抽象的にうまく意匠化しています。
一見、地味な配色ですが、青地に対して補色に近い色を組み合せ、全体が重くならないように生地白をうまく生かしています。リピートの糊置きの技術も確かな佳作です。

■埼玉県美術家協会賞

「風化」
髙木叔子(たかぎとしこ)
風化
側面が三角になった高さが40cmほどの陶の作品で、岩が時を経てだんだんと朽ち、風化してゆく様を思わせるものです。
表面を錆びた茶色とくすんだ白で彩色し、ヒビ割れの中に錆びた鉄片や針金、陶片をさしこみながら配して、朽ちたメトロノームが永かった時を刻んでいます。つい昨日の記憶が風化されたようで、思わず己の時間の経過を想い起こされる、近しい作品です。

■埼玉県美術家協会賞

「欅拭漆楕円盆」
丸岡重信(まるおかしげのぶ)
欅拭漆楕円盆
欅を素材にノミを主体にカンナも使うくり物の技法で、4cm前後の輪郭部を端反した50cmの楕円型の運び盆です。輪郭部に所々浅い稜を施し、単純にならないように変化させています。刃物の切れ味も良く、拭漆もきれいに塗られ、厚さもほど良く、心地よい軽さを持ち合わせたバランスのとれた作品です。

■時事通信社賞

「放鳥」
森田恭子(もりたきょうこ)
放鳥
大草原で親とはぐれたのか、傷ついたのか、保護して世話をしていた小鳥を自然にかえす時が来たようで、雲の流れ、風の方向に気をつけながら無事に育ってほしいと願う少年の優しい気持ちがよく表現されているように思います。
仕事も正確で美しく細部まで気配りが行き届いてきれいにまとまっています。

■埼玉県美術家協会会長賞

「菱絽織り 夏帯地 『澪標』」
松浦弘美(まつうらひろみ)
菱絽織り 夏帯地 『澪標』
松浦弘美氏の作品は、菱絽織の技術の高さがすばらしい。夏帯地「澪標」の題名が素直に伝わってきます。青色の変化を基調とした配色に、経糸の繊細な変化を加え、特に中心部をはずした鶯色系の経糸は「澪標」を表しているのでしょうか。その効果は作者のセンスのよさを感じさせます。技術、表現ともに神経の行き届いた秀作です。

■高田誠記念賞

「晨」
西山邦彦(にしやまくにひこ)
晨
自然をテーマに長年作品を作っている作者。ピンと張りつめた空気の中で飛び出そうとしている鷺が自然の厳しさを、穏やかな山並みや植物が自然の優しさを、作者の熟練した鏨の技でより効果的に表現しています。緊張感の中にもホッ!とする安らぎを感じる優れた作品です。

ページの先頭へ第5部「書」

審査主任 栗崎浩一路(くりさきこういちろ)
第64回展の応募作品は547点でした。前回展に比べ37点の減、誠に残念な結果です。近年は以前のように初学者的な作品が殆ど出品されません。先ず挑戦してください。そこで何かを感じ、歩みが始まるのです。
入選は284点を選出しました。出品作品は一定の水準に達した多様な表現のものが多く、鑑査を三次に亘って行いました。入選者の年齢は88才の男性から16才の高校生までと、埼玉書人の幅広さを感じます。
審査も三次に亘り厳正かつ慎重に行い、一般と会員の中から10点の特選作品を決定しました。幾度も見直し最後まで残った受賞作品は、何れも錬度が高い魅力的なものです。年齢も50代60代の人が多く、永年の研鑽があって結実したものです。作者には心から祝意を表します。
私達は今を生きています。作品に今の美意識が表出していなければ、それは化石と同じです。呼吸をしていません。今回展の作品を見てそのことが少し気になりました。様々な美しいものを見て、作品を輝かせてください。

■埼玉県知事賞

※受賞作品をクリックしますと拡大画像が表示されます。
「發潭州」
島澤鷺舟(しまざわろしゅう)
發潭州
規模が大きく構成され、調和のとれた存在感のある作品です。線は深く重厚で、実に温かさを感じます。作品中央の造形変化は周囲の余白を生かし、静かな中にも動きを感じさせて全体を盛り上げています。スケールが大きく、誠に魅力的であります。作者の書に対する情熱が伝わってくる格調の高い作品です。

■埼玉県議会議長賞

「蘇舜欽詩」
横田北園(よこたほくえん)
蘇舜欽詩
運筆の呼吸は闊達で線質は自然で躍動感を感じます。心の鼓動が脈々と伝わってくる快作です。草書のもつ流動美が発揮され、淡墨のもつ日本の抒情的で詩情にあふれた品格ある作品となっています。書を通して自身を磨くことに重きをおいていることを感じます。高い精神性が伝わってくる作品です。

■埼玉県教育委員会教育長賞

「李商隠詩」
町田武山(まちだぶざん)
李商隠詩
56文字が行草体で紙面の隅々まで配慮された、全体構成が良い作品です。書き出しは緊張感を有しながら抑えめに入り、作品上部の山場で盛り上げています。墨量は比較的多めですが、運筆に重さを感じさせず、力強く躍動感に富んだ見事な作品に仕上がっています。
これを踏み台として更なる精進を期待します。

■埼玉県美術家協会賞

「三富朽葉『メランコリア』より」
星野青楊(ほしのせいよう)
三富朽葉『メランコリア』より
紙を切りさくような鋭い線質の個性的な調和体作品です。強い線の中にも配の巧みさで明るい雰囲気を出しています。角度のある直線と丸味を生かした曲線の「かな」との組合せも見事です。しかも書体の大・小の構成が効果的で、余白美にもつながっています。また、極端な太い線と鋭利な細い線を交えた運筆が快くて、感性豊かな優れた作品となっています。

■埼玉県美術家協会賞

「老子語」
柚木翠蓮(ゆのきすいれん)
老子語
端正な字形の隷書が並ぶ、明るく纏りのある作品です。文字の大小が、効果的にバランスよく配置され、墨の潤渇もあり、作品に立体感を与えています。重みのある、豊かで力強い線と、鋭く引き締まった線が組み合わさり、作品に深みを出しています。隷書の筆法の中にも、行草の筆意が感じられる、生き生きとした伸びやかな作品です。

■埼玉県美術家協会賞

「あしひきの」
新井文香(あらいぶんこう)
あしひきの
二首を大字かなで、縦4行に美しく纏め、自然な流れの中に強弱を入れ、落ちついた作品に仕上げています。特に3行目の山場の間と渇筆は、作品全体を際立たせています。紙は大字かなの加工紙を使い、かな特有の艶やかさを感じることができます。落款も違和感なく、作品と一体になって見事です。
長く研鑽した成果が線質に感じられ、心に響く作品になっています。

■さいたま市長賞

「江上晩泊」
小峰青湖(こみねせいこ)
江上晩泊
七言詩28文字を縦3行、点画を簡略にした草書体で纏め、淡墨を用いた秀作です。
文字の大小、強弱はもちろんのこと、変化や配置が粘り強い線で表現され、1字1字が奔放闊達でありながら一環し、全体が流れるような筆致で仕上がっています。文字間、行間のバランス、特に2行目の上方「沙鷗」の2文字にみる潤渇は妙です。

■さいたま市議会議長賞

「牛嶠詩」
増尾龍泉(ますおりゅうせん)
牛嶠詩
隷書作品として、非常に緻密に構成された作品です。線の疎密のバランスが妙であり、また趣のある黒色・滲みや、終筆に現れる特徴のある波磔が、独特な抒情を醸し出しています。
隷書というと、重厚でがっちりとした結体を思い浮かべますが、この作品は重みのある中にも、軽妙なリズム感と明るさが感じられ、魅力を放っています。

■朝日新聞社賞

「菅家詩」
飯室緑川(いいむろりょくせん)
菅家詩
大らかでスケールの大きい気迫に満ちた作品です。墨量や運筆のメリハリに留意され、堂々とした充実感を覚えます。後半の余白の美しさは情趣に溢れ品格ある作品となっています。日頃、真正面から制作されている作者の書にかけた情熱が伝わってくる作品です。

■FM NACK5賞

「林逋詩」
眞々田壽扇(ままだじゅせん)
林錝詩
行間を広く取って縦への流れを強調しながら、余白の白い部分は川の流れを連想させます。変化の多い結体とスピード感が深い表情を醸し出しています。線質も渋さと厳しさを合せ持つ、ハイレベルの作品と言えます。
ムードに流されない骨格の強い文字が、氏の目指すところのようです。

■埼玉県美術家協会会長賞

「崔顥詩」
佐々木紅苑(ささきこうえん)
崔顥詩
七言律詩を3行に纏め、気迫が籠った特別賞らしい堂々とした作品です。情感の高まりが、小気味よい運筆のリズムと伸びのあるしなやかな線を表出し、この作品を輝かせています。
さらに女性とは思えない力強さで見る者を圧倒する勢いは、日頃の練磨のたまものでしょう。今後の更なる活躍を期待します。

■高田誠記念賞

「おとめらが・・・」
石塚秀石(いしづかしゅうせき)
おとめらが・・・
額面全体に大胆な構成で、左側の大きな余白を生かして見る人の目を引き付ける作品です。ポイントを2行目に配し、極端な渇筆と墨量を入れて作品に深みと運筆の美を添えています。また、鋭い線と潤いのある書体の巧みな配字にも作者の意が見えていて、すばらしい美意識は見る人を感動させます。

ページの先頭へ第6部「写真」

審査主任 森山常久(もりやまつねひさ)
県展も回を重ねる事64回、写真部も第1回からの参加ですから同様です。
本年度64回展に参加、応募してくださった1242点の、作者の皆様には、心より御礼申し上げます。
64年間の写真を考えますのに、写真ほど機材等の劇的な変化に、良くも悪くも振り回された部門は無いでしょう。それでも`写真`という言葉は変わりません。真底にあるもの、対象物を借りての自己の表現を写し取ることは、何がどう変わっても不変です。選択肢の多くなった諸々を逆手に取って、自分が好きだと思うカメラで、好きな方法で、好きな表現で、ついでに好きな場所で、苦労してもしなくてもシャッターを押して、自分の写真を、自分が一番に好きになれる写真を、そして作品を、撮り続けて、作り続けて下さい。そして一番自分の好きな写真を必ず、出品して頂ければと熱望しています。
そんな事を各作品の中に眺めながら、審査をさせて頂きました。
あとほんの少し、自分の好きな写真に、化粧とか、味付けとかの出来が、入選とか入賞の境かも知れません。そんなことを、他人の好きな写真から盗んで頂けたら、県展も貴方にとって、有意義な場所になる事でしょう。

■埼玉県知事賞

※受賞作品をクリックしますと拡大画像が表示されます。
「暮らしの片隅」
小林千津子(こばやしちづこ)
暮らしの片隅
左端の写真、シャツに当たった光、そこに醸し出す空気、その“感”をそのまま右へと送り、4枚全体を見つめた時に、統一された、溢れる様な情感、そこに写し取られている物を借りて、そこにある見えないものを十二分に描き出しています。感性の現し方、その技術も高く、高評価でした。

■埼玉県議会議長賞

「春の予感」
中嶋幸子(なかじまさちこ)
春の予感
春への予感という小さな言葉を、大きな無限の広がりの有る映像へと、巧みに描き出しているようです。色調、フレーミング、階調、写した物たちの配置、6枚の写真の配置も含めて、作者の感性ワールドを、格調高く描き出しています。好印象の秀作との評価でした。

■埼玉県教育委員会教育長賞

「昼休み」
齋五澤勝己(さいござわかつみ)
昼休み
虚と実が同時に表れる写真でしか出来ない世界、ゴム長とシートで一休みを演出?したら、赤とんぼも昼休みに参加してくれました。作者が一番嬉しかった事でしょう。背景も的確に捉えて、秋の気配満載です。
理屈抜きでの楽しさが高評価でした。

■埼玉県美術家協会賞

「新宿界隈・寸景」
新井富二(あらいとみじ)
新宿界隈・寸景
写真の持つ力強さが、如実に現れる街中スナップ。ほんの少しの笑いとかペーソスを意識させ、確かで巧みな切り取りで左上の幕開きから、右下のエンドまでの構成で、ここに写されているもの以上の雑多な寸景が見えるようです。
作者の徘徊も、もちろん感じさせて。

■埼玉県美術家協会賞

「異空間」
峯岸征治(みねぎしせいじ)
異空間
良くぞこの場をこの様に切り取ってくれました。写真に置き換えて始めて見えてくる作者の感じた異空間、写真で撮るとの意識が先になければ見過ごすことでしょう。少し残った雪と溶け出した水に映りこんだ諸々、その水跡の異様な形、この写真を見た人たちにも異空間の何かを、確かに感じさせてくれます。

■埼玉県美術家協会賞

「退屈限界」
坂本典子(さかもとのりこ)
退屈限界
念ずれば何かが現れるものだと、写真ってそういうものだと、確かに現れた様です。表情だけに絞り、さて後は、相当の粘りで一枚をゲットした様子が感じられます。どんな方法を使ってもこんな表情を作る事は不可能です。
だからこそ見る人を和やかな気持ちにさせてくれます。作者も含めて3人(あえて)の退屈限界も含めて。

■埼玉県美術家協会賞

「希望の灯」
松重輝夫(まつしげてるお)
希望の灯
花、チューリップでしょうか。赤を大胆に使い、花びらの持つ柔らかな曲線で空間を描き、花心からの黄色の光を、希望の灯として作者だけの、花の世界を感じさせてくれます。この作品は1から10まで計算尽くで、60×90センチのキャンバスに描き出させています。一輪の花をこう料理出来る事も、写真の持つ無限の可能性を感じさせてくれます。

■さいたま市長賞

「ありし日」
山下智子(やましたさとこ)
ありし日
題材としては以前から度々用いられていますが、それらに作者だけの視点を強く入り込ませ完成させています。4枚の写真を上から流れで見させる為の時計の傾き、最後の斜めの光線等、その視点が主になるからこそ、ありし日の普通のものたちが輝いて見えてくるようです。だからこそ、組み写真の基本と起承転結がキッチリと読めます。

■さいたま市教育委員会教育長賞

「満点の地蔵桜」
酒井理吉(さかいただよし)
満点の地蔵桜
この作品は写真の不変、ネイチャーフォトの素晴らしさを感じさせてくれます。
時間、場所、天候、季節、諸々これもまた緻密な計算がなければ、写真に写し取ることは出来ません。その結果であるシャッター開放時間に自身を託す、星が流れ、桜が息吹き、赤の地蔵が、夜が明けて陽光が出てくるまで。だからこそ、見る人に確かな感動を与えてくれます。

■NHKさいたま放送局賞

「おでかけ」
根本美津江(ねもとみつえ)
おでかけ
この一枚の写真の中に、いろいろと読める要素が、隠し絵の様に散りばめられているようです。画面右半分黒の中の窓、老婦人の頭上の黒い影、無機質な壁、何よりも不思議さが漂う老婦人。スナップ写真の持つ、瞬間の切り取りが色々な要素を写真に定着させ、それが見る人に何かを感じさせてくれます。

■共同通信社賞

「モロッコ」
益子早苗(ますこさなえ)
モロッコ
単純な旅先の写真にとどまらず、単純な印象記で終わらせずに、一歩踏み込んだ強さが感じられます。左下ピンクの壁と現地の女性の使い方、カメラを持った自身の影、一枚一枚中身に合った色味、写真が格調高く大きく見えます。

■埼玉新聞社賞

「回想」
齋藤美来(さいとうみく)
回想
今、目の前にあるものたちに語りかけ、カメラで拾っていくような風景、そんなピュアなものが感じられます。スクエアなモノクロ画面に、自己主張していない弱そうなものたちが写っているからなのでしょうか。それにも増して作者の感性が8枚を通して見えてくるからなのでしょうか。

■埼玉県美術家協会会長賞

「惜別」
荻原光治(おぎわらみつはる)
惜別
真ん中の小さな写真、この具象がこの作品のすべてなのでしょう。そこから、その時脳内にあったであろう心象風景を、4枚の写真に起こして周りを囲み、惜別という時を描き出すのに、十分な感性と技量が感じられます。

■高田誠記念賞

「新川回想(熊谷市旧新川村)」
長 秀之(ちょうひでゆき)
新川回想(熊谷市旧新川村)
自身の思い入れがある地域なのでしょう。その思いだけを何も足さず何も引かずの心で淡々と写し取っている様です。写し取るものたちへの絶妙な距離感が、それを際立たせているようです。この作品を見た人がこんな風に写真を撮っていきたいと思わせる何かが、この作品には有る様に感じられます。